部門間をつなぐビッグデータ管理プラットフォーム(Moldex3D iSLM)によるサイバーフィジカル統合の実現

CoreTech System研究開発部エンジニア・陳玠文

クラウドプラットフォーム、ビッグデータおよび人工知能(AI)の統合は、現在数多くの企業が追及している技術目標です。従来型の企業システム構造においては、チーム、部門または個人ごとに専用のデータベースを構築することは珍しくありませんでした。同一のデータが異なる場所で管理されると、各々に変更が加えられ、会社内部のデータ情報を統一できない事態を招くことがあります。また、データが統一されていない、または情報が共有されていないために、製品の開発過程において、過去の開発経験が受け継がれなかったり、既知の開発上の問題を修正できなかったりすることはまれではありません。データ情報の分散は、今後企業がAI化を推進する上での大きな障害となります。そのため膨大なデータ情報の保存場所の統一および安全な管理、ならびに有効な情報を整理して形式化および可視化を行うことが非常に重要な課題となっています。

Moldex3D iSLMはデータ管理およびアプリケーションに基づいて開発されたクラウドプラットフォームシステムです。新たに金型を開発する必要がある場合、iSLM Solution Managementを利用し新規(金型)プロジェクトを作成し、製造性考慮設計(Design for Manufacturing:DFM)(図1)、解析(Computing Aided Engineering:CAE)(図2および図3)から最終的な現場での試作に至るまでのすべてのデータや情報を記録することができます。そのほか、現場における試作が終了した後、iSLMは試作結果情報をiSLM のSolution内に記録し、CAEデータと比較を行う事が可能です(図4)。

図1 製造性考慮設計(Design for Manufacturing:DFM)の記録は、異なるDFM問題を設定可能
図2 プロジェクトデータの分析により、ユーザーはメッシュ、材料、成形条件の詳細データを
比較し、さまざまなパラメータによる違いを観察可能。

図3 3D ViewerによるCAE解析結果の検証

図4 CAEと現場における試作結果の比較

Knowledge Management(KM)はiSLM全体のデータベース検索システムです。金型作成時に定義する分類項目(Industry、Product、Part)、金型の材料、金型の厚さ、金型の体積などのデータによって、希望するパラメータの過去の金型設計を素早くフィルタリングできるほか(図5)、ユーザー自身でプロジェクト(金型)を選択し、KMの比較機能を利用してその中から類似する金型のCAE解析および現場における試作の開発経験または問題を検索し入手することができます。開発担当者は、製品の開発に着手する前に過去の実績を参考にすることができ、時間コストを削減できるだけでなく、CAE担当者はこのような比較により実際の過去の試作経験から、CAEパラメータを過去の経験や実績に基づき設定することができます。

図5 分類項目および材料によるプロジェクト(金型)のフィルタリング

図6 KM金型比較

Moldex3D iSLMクラウドプラットフォームを通じ、企業は金型開発プロセス内のすべての関連データのより効果的な管理、DFM、CAE解析から現場における試作記録データまでの統合、迅速なデータ蓄積、サイバーフィジカル統合の実現を果たすことができます。また、データの可視化により作業フローが明確になり、より効率的にチーム内での作業が行えるようになります。今後将来的には、iSLMに蓄積されたビッグデータを機械学習やディープラーニングを通じてより有効に活用できるように開発を進めていく予定です。


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