ガスアシスト射出成形（GAIM）は、充填時に圧縮ガスをパッキング媒体としてガスをキャビティに注入し、製品サイズの安定性と機械強度を確保する技術です。従来の射出成形と比較して、ガスアシスト成形はプラスチック材料の使用量削減とサイクルタイムの短縮を見込める画期的な技術です。ただし、ガスアシスト成形には、ガスの制御と流動過程の確認がともに容易ではないという欠点があります。また、ガスアシスト成形はガス針の位置と数、ガス射出時間、射出圧力、流量といった新たなパラメーターを必要とするため、金型の研究開発・製造コストにも大きく影響を及ぼします。
Moldex3D ガスアシスト射出成形モジュール（GAIM）は、ガスの浸透挙動の可視化やオーバーフローの予測が可能です。さらに、ガス射出時間、注入位置、オーバーフロー領域の最適化に使用できるだけでなく、ウェルドライン、ひけマーク、体積収縮や凹みといった問題の予測にも役立ちます。また、製品の板厚とコア・アウト比率分布の確認にも対応しています。
以下は、円形横断面ガス流道のプレートを例にした、このモジュールの説明です（Fig. 1). Moldex3Dの予測による樹脂注入の各段階におけるガスの流動をFig.2に示します。公開されている実験結果（Ref.1）では、ガスの浸透長さは約15.8cmでした。Moldex3Dが予測したガスの浸透長さは16.0cmであり、実験によるポリマー溶解位置での観察結果とよく一致しています。
Fig.1 ガスのチャンネルを備えた薄板の幾何形状パラメーター
(a) 充填率 75%
(b) 充填率 94%
(c) 充填完了
Fig. 2 ポリマー溶解とガスフロントの薄板充填パターン
横方向におけるガスの浸透状況を確認するため、ガスの浸透方向におけるコア・アウト比について解析結果と実験結果を比較しました。（Fig.3）。ガスのコア・アウト比の定義はFig.4を参照してください。この時点での構造におけるMoldex3Dによる予測と実験値は同様の傾向を示しています。1回目の浸透（Primary penetration）段階のコア・アウト比率は概ね一定となっています。その後、2回目の浸透（Secondary penetration）では急激に0まで低下しています。これにより、Moldex3Dはガスアシスト製造プロセスにおける1回目と2回目の浸透ガスの挙動を正確に予測していることがわかります。
Fig.3 ガス浸透方向のコア・アウト比率（R-S）/R分布
（橫軸：位置（cm） 縱軸：コア・アウト比率，Experiment：実験結果）
Fig.4 ガスコア・アウト比率（R-S）/R略図
ガスアシスト射出成形におけるMoldex3Dの解析結果は、実験結果とよく一致しています。このことから、Moldex3D GAIMモジュールは、ガスアシスト射出成形におけるポリマー溶液の充填とガスの浸透挙動のモデル化に有用であるといえます。また、製品表層の板厚とコア・アウト比の分布の可視化も可能です。Moldex3D GAIMモジュールを用いてポリマー溶液とガスの挙動を理解することで、実際の生産開始前の設計最適化と柔軟な対応が可能となります。