キャピラリーアンダーフィルプロセスのシミュレーション 吐出および這い上がりを考慮

CoreTech System研究開発部シニアエンジニア 孫嘉蓬

フリップチップの封止プロセスでは、しばしばキャピラリーアンダーフィルによって封止材の充填を行い、部品を保護する目的を達成します。プロセスは図1に示すとおりであり、ディスペンサーを利用してチップの縁に直接封止材を注入し、液状の封止材が毛細管現象によって流動し続けてチップ底面全体を満たします。一般的に、吐出プロセスにおいては、樹脂量の管理を行うほか、毛細管現象の作用に合わせるために、通常は基板の底部を加熱します。基板を加熱することにより、封止材がチップと基板の間に滴下される際の粘度が効率よく低下し、流動速度が高まって上下の隙間に完全に充填することができます。

図1 キャピラリーアンダーフィルプロセス模式図 [1]

アンダーフィルプロセスの駆動力は毛管作用であるため、気相-液相の表面張力についての表現および固相-液相の壁面吸着条件の考慮は重要なシミュレーション項目です。気相-液相間の毛管作用は主として気相-液相の表面張力およびメルトフロントの分布で構成されます。充填剤と接触面(基板)の吸着力は平衡状態の接触角によって表現されます。図2に示すとおり、ヤングの式からこの角度が実際には気体、液体および固体の3つの異なる相の間の表面張力または吸着力が平衡に達した後の結果であることが分かります。そのため、この接触角を入力することは三相間の平衡状態を管理することに等しいと言えます。

図2 ヤングの式

アンダーフィル剤は熱硬化性樹脂であるため、アンダーフィル封止を行った後のチップに対して再加工を行うことは困難です。そのほか、毛管作用の挙動のみに頼った流動および焼付による材料の硬化には時間がかかり、開発段階における試行錯誤はコストが上昇する要因になります。開発コストを引き下げるためには、CAEシミュレーション解析を用いて一番ニーズに見合う設計管理を見つけることが最も効果的な方策です。

アンダーフィル剤は高コストであるため、樹脂量を管理することも製造工程において重視される要素の1つです。吐出箇所のほか、這い上がりの挙動によってチップ側面のバンプ箇所においても樹脂が流入する現象が見られます。そのため、あふれ出た樹脂の流れを制御することは樹脂量を管理する目的のほか、メルトフロントによる封止の解析にも役立ちます。図3に示すとおり、吐出を行った後、樹脂は主として毛管作用、重力および流体自身の粘度の3つの駆動力の影響を受けて流動します。そのため、樹脂量には毛管作用による充填流動挙動、チップ側面の這い上がり流動挙動および樹脂自体が基板上で沈下した際の外側への流動挙動が含まれます。すなわち、CAEシミュレーションによる樹脂の使用について完全に理解するには、これら3つの流動について総合的なシミュレーションを行わなければなりません。

図4のシミュレーションおよび実験の結果は、シミュレーションにおいて吐出および這い上がりの流動箇所が軽視できないものであることを示しています。従来のシミュレーション法では吐出箇所および這い上がりの効果が軽視されていたため、メルトフロントシミュレーションにおいて這い上がりによって縁から充填される効果が欠落していました。シミュレーション結果の品質を重視するため、Moldex3D 2020のキャピラリーアンダーフィルモジュールでは総合的なCAE解析を行えるようになりました。本モジュールではフリップチップ製品の詳細な三次元モデル(図5のとおりバンプ分布およびダイを含む)を使用しています。吐出情報はマルチパス、パスごとの吐出量、ならびにディスペンサー移動の開始時間および速度について設定を行えます(図6)。材料パラメータは充填剤と異なる素材の接触面との接触角について設定でき(図7)、環境因子の変化を受けた高分子の挙動を計算できます。

図3 樹脂流動関係図 [2]

実験 [3]

従来のシミュレーション結果 [3]

Moldex3D 2020によるシミュレーション結果
図4 実験およびシミュレーションにおける這い上がり挙動

図5 3Dモデル

図6 吐出設定

図7 毛管作用関連設定

Moldex3Dでは「流動時の吐出プロセス」、「バンプ箇所のアンダーフィル」および「ダイ外部の流動(這い上がりおよび延伸の流動)」を計算できます(図8)。図9は吐出箇所の樹脂がアンダーフィルのプロセスに伴って沈下する状態変化を示したものであり、科学的シミュレーションプロセスにおいて総合的な物理的挙動を考慮することが必要であることも示しています。

図8 充填解析

図9 吐出箇所の変化模式図

以上のとおり、挙動が複雑で試行錯誤のコストが高いアンダーフィル封止プロセスに直面しても、Moldex3D 2020を利用することにより、設計段階において解析を通じて吐出管理および這い上がり挙動のアンダーフィルに対する流動の影響を把握し、樹脂の総量管理を使用して設計の目的を達成することができます。

 

Reference

  1. Hui Wang, Huamin Zhou, Yun Zhang, Dequn Li and Kai Xu Three-dimensional simulation of underfill process in flip-chip encapsulation, Computers & Fluids 44 (2011) 187–201
  2. S.W.M. etc., 3-D Numerical Simulation and Validation of Underfill Flow of Flip-Chips. IEEE Transactions On Components, Packaging and Manufacturing Technology, Vol. 1, No. 10, October, (2011), pp. 1517-1522
  3. Sung-Won Moon, Zhihua Li, Shripad Gokhale, and Jinlin Wang, IEEE TRANSACTIONS ON COMPONENTS, 3-D Numerical Simulation and Validation of Underfill Flow of Flip-Chips (2011)
  4. Nordson ASYMTEK: The NexJet System – Flip Chip Underfill:  https://www.youtube.com/watch?v=hdxjWJ2c0ao

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