RTMシミュレーションの精度における繊維シート基材の浸透性の測定評価

CoreTech System材料科学研究センター 部門長 王智偉

製品の品質を向上させるため、業界では多くの努力を費やしてより軽く、より強く、より効率的な製品を製造してきました。ここ10年ほどで、繊維強化プラスチック(FRP)の高い機械的強度と軽量特性により、3C、自動車、造船、航空宇宙および風力発電製品の製造に広く使用されるようになりました。RTMは、現在最も有望な新技術です。RTMは、複雑な形状の大型成形品の製造に適した液体複材合成形(LCM)プロセスの1つであり、高い機械的強度、厳しい寸法公差、外観などの要件を満たすことができることから、業界で幅広く使用されています。さらに、RTMは最も効率的で経済的なプロセスの1つでもあります。その理由として、安価なプロセス装置、クローズドモールドプロセス、低い射出圧力、機械的特性の簡単な制御、金属インサートとアタッチメントの組み込みが可能、複雑な大型成形品の製造に使用可能、および低い人件費などが挙げられます。

しかしながらRTM業界が直面している課題はまだあります。例えば、製品の繊維の体積が多い領域は、金型の流動挙動に大きな影響を与えるため、樹脂の流動挙動を正確に予測することは困難です。そのためRTMオペレーターは、これらの影響を正確に把握することも、注入プロセスが終了する前に成形品が完全に飽和したかどうかを観察および検証することもできません。製品が100%含浸されていない場合、ドライスポットやボイドなどの欠陥が発生するため、ドライスポットのないRTM製品の製造に成功するまで製品を廃棄する必要があります。

この試行錯誤の方法で大型構造のRTM製品(ユーティリティグレードのタービンブレードなど)を製造する場合、コストは非常に高くなります。そこで有効なCAEシミュレーション技術を用いると、複雑な構造を持つRTM製品の流動挙動を予測することができます。現在の市場におけるRTM製品に対する需要および繊維材料メーカー、金型メーカーなどを含む潜在的な顧客は非常に多いものの、RTMをシミュレートできる解析ソフトウェアはまだ非常に少ない状況です。繊維シート基材の浸透性は、RTM CAEシミュレーションの品質に影響を与える重要なパラメーターの1つです。また浸透性は、多孔質媒体(繊維シート基材など)の特性を表し、流体または気体が媒体に浸透する能力の指標でもあります。高い浸透性は、流体が媒体を急速に通過できることを示しています。真空アシスト樹脂トランスファー成形(VARTM)などの従来の測定方法を使用する場合、開いた金型を真空バッグで密封して真空環境を作り出す必要があります。このプロセスは手間がかかるだけではなく、人為的ミスも発生しやすくなります。

これに着目して、Moldex3Dの材料科学研究センターは複合材料の測定能力を高めるため、EASYPERM(図1)を導入しました。EASYPERMは2015年にJECイノベーション賞(JEC Invention Award)を受賞した、繊維シート基材の浸透性を測定するための機器であり、圧力センサーを介して製品のさまざまな部位の局所圧力を測定し、面内および面外の浸透性内面と外面を描画できます。繊維シート基材の浸透性は、平衡流量と局所圧力を使用し、ダルシーの法則を適用することによって計算されます。この研究では、シミュレーションツールの信頼性を検証するため、浸透性測定プロセスの非平衡段階でのオイル充填挙動をシミュレートします。この段階では、システムはまだ平衡に達しておらず、局所的な圧力が時々上昇します。

図1 (a) EASYPERM、(b) 注入金型、(c) データ収集および解析画面

圧力センサー(図2)により局所的な圧力の時間経過変化を観察できるだけでなく、フローフロントの到達時間を把握することもできます。フローフロントがセンシングポイントに到達すると、局所圧力がゼロから上昇します。次に、相互検証を行うため、Moldex3D RTMモジュールにEASYPERMキャビティをコピーし、シミュレーション時の実験と同じ注入設定を使用しました。この検証事例では、シミュレーションと実験結果におけるフローフロント到達時間および圧力上昇傾向を比較します。図3 (a) は、シミュレートされたフローフロントが実験結果と非常に似ていることを示しており、Moldex3D RTMソルバーの精度が非常に高いことが分かります(図4、表1)。

図2 キャビティ内の平面形状における圧力センシングポイントの位置(△は元の位置の圧力センシングポイント、○は平面内の他の部位の圧力センシングポイント)

図3 実際の注入条件に基づくシミュレーション設定:(a) 入口と圧力センシング位置、(b) フローフロント時間

図4 EASYPERMの実験データとシミュレーション結果を比較したところ、両者は非常に近く、どちらもフローフロントがセンサーノードに到達すると圧力がゼロから上昇することを示しています。

RTMシミュレーションでは、繊維シート基材の浸透性などの材料特性がシミュレーションの精度に大きく影響します。従来のVARTM測定の浸透性データの精度と信頼性は、実験室の担当者の操作にのみ依存します。この問題を改善するため、Moldex3Dは材料測定能力を特別に拡張し、EASYPERMを導入して複合材料に対する業界のシミュレーション要件を満たします。


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