ノンマッチングメッシュ技術:全モールドベース解析に対応

プラスチック成形シミュレーションの技術開発の進化は、製品の充填シミュレーションから始まりました。続いて、ランナー、ゲート充填解析、冷却回路システムの冷却解析に対応し、現在では、インサート部品の影響やモールドベース全体の影響を考慮した解析が可能となっています。近年、市場競争の激化にともない、実際のモールドベース解析のニーズも高まっています。金型設計の完成度は製品の歩留まりに大きく影響し、モールドベースの解析によって効率的に歩留まりを高めることが可能であるためです。たとえば、冷却回路システムの配置は、各モールドプレート温度の均一性に影響します。モールドプレートの温度が充分に均一でない場合には、モールドプレートの変形を招き、製品がバリを形成しやすくなるため、歩留まりが低くなります。もう1つ例を挙げると、プラスチック充填シミュレーションにより製品のエアトラップ発生の位置を予測することができます。エアトラップ発生位置付近に適切なパーティングラインや突出しピン、スライドなどの金型機構を配置することでベントが有効に働き、エアトラップや焼け跡の発生を防ぐことができます。

ユーザーのレベルが高いほど、より詳しく細かい解析結果が必要となります。そのためには、きわめて完全な金型メッシュの構築が必須です。しかし、パーツ間のズレがないソリッドメッシュの構築は、経験豊富なユーザーであっても容易ではありません。メッシュ作成に時間や労力を要するため、実際のモールドベースの樹脂流動解析の事例はこれまであまり多くありませんでした。

Moldex3Dプリプロセッサを用いると、解析を行う際に全モールドベースモデルのジオメトリモデルをインポートし、各金型パーツに対して精細なメッシュを作成できます。Moldex3D R14.0バージョンからはプラスチックパーツとプラスチックパーツのインサート部品との接触面のノンマッチングメッシュシミュレーションのサポートを開始しました。これにより連続的な解析結果を入手できるようになり、メッシュ作成にかかる時間と労力を大幅に短縮しました。Moldex3D R15.0ではノンマッチングメッシュ機能が改良され、プラスチックパーツとそのインサート部品、モールドベースのソリッドメッシュの自動生成が可能になりました。ノンマッチングメッシュ機能は、最新Moldex3D R16でさらに拡充され、モールドインサート部品(Mold Insert)とモールドプレート(Mold Plate)属性に対応しました。これには固定側(Fixed) モールドプレートおよび可動側(Movable)モールドプレートが含まれます。ノンマッチングメッシュ技術の利用により、全モールドベースのソリッドメッシュの自動作成を実現できます。

ノンマッチングメッシュの解析を行う全モールドベースモデルの操作事例を紹介します。

  1. 全モールドベースモデルの整理と簡略化:金型設計には多くの細かいパーツがありますが、通常、そのようなパーツは解析には大きく影響しません。メッシュの要素数の低減と解析時間の短縮を目的として、まず、CADシステムでモデルを簡略化します(例、ネジを外す、ネジ穴を埋めるなど)。

  2. 整理されたモデルをMoldex3D Designer BLMにインポートし、属性を設定します。プラスチック部品、ランナー、冷却回路、モールドインサートなどの属性をそれぞれ設定し、新しいモールドプレートの属性を用いて固定側/可動側モールドプレートを設定します。続いて、属性を設定したオブジェクトの表示/非表示を設定します(Fig.1)。

Fig.1  全モールドベースモデルとモールドプレートの属性設定
  1. ノードピッチを設定:パーツ、ダイインサートからモールドプレートまで、順番にノードピッチを設定します。新しいノード設定メカニズムは、パーツまたはモールドベースのインサート部品のエッジのノード情報を自動的にダイインサートまたはモールドプレートに隣接するエッジに送ります。このメカニズムは、複数の部品をもつ全モールドベースモデルのノード設定効率を高めます。また、ノード密度が隣接する部品と大きく異なることがないように調整します。

Fig.2  3つのステップでノード設定を行い、ノード情報を次のオブジェクトの解析に引き継ぐ
  1. ソリッドメッシュを構築:ソリッドメッシュ生成ボタンをクリックすると、全モールドベースモデルのソリッドメッシュが自動生成されます。

Fig.3  全モールドベースモデルのソリッドメッシュ断面図
  1. MFEファイルを出力:ファイルを出力する前に、メッシュモデルの自動チェックが実行されます。メッシュ干渉の問題がある場合、警告がポップアップ表示されます。ノンマッチングメッシュ技術は小規模な干渉を許容しますが、大規模な干渉がある場合にはメッシュ作成時に問題が発生します。そのため、大規模な干渉はこの後行う解析に問題が出ないようにする必ず修正する必要があります(Fig.4)。

Fig.4  メッシュ出力前のメッシュ干渉チェック
  1. 樹脂流動解析の実行:本事例の樹脂材料はPCで、モールドプレートの材料はM315 EXTRAです。デフォルトの溶融温度は290°C、モールド温度は105°Cです。固定側モールドプレートと可動側モールドプレートのモールド温度を確認すると、ノンマッチングメッシュモデルの温度に連続性があることが確認できます。また、熱量が各モールドプレートに行き渡っていることがわかります(Fig.5)。

Fig.5  ダイインサートとモールドプレートの温度分布

Moldex3D R16の全モールドベース解析は、全モールドベースモデルの実際の金型設計データに利用できます。新しいモールドプレート属性の追加により、固定側/可動側モールドプレートの定義が可能になりました。また、高度なノンマッチングメッシュ技術を実装したことで、全モールドベースのソリッドメッシュを素早く作成できます。総合的な金型解析結果から、金型設計で求められるより多くの解析データを得ることができます。試作金型の修正回数を減らすことで、金型開発の納期短縮、および、製品の歩留まり率の改善を可能にします。


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